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  • 03/29/14:29

01.20.10:14

140文字SS

10/26 『こたえられない』

返事くらいしろ、と背中に声を投げられた。最初は聞こえなかったふりを、二度目は肩越しに声の主を睨み付ける。すると、故郷の雪深い山を想起させる薄ら白い髪の男が口の端を釣り上げて見せた。リィンは今一度男から視線を外すと口をゆすいでから言った。
「歯を磨いてる時くらい勘弁してくれ」


11/6 『不思議と心地よい雨音の中で 手を差し出して あなたは 「私はあなたに救われた。 」と言いました。』

雨の音に混ざって歌が聞こえる。かん高く弾む女の歌声だ。穏やかな子守唄とも、郷愁を帯びる童唄とも違う。仄暗い激情を内包しながら、それでも抑えきれない高揚感を帯びて跳ね躍るその歌を、クロウは確かに知っていた。
雨音に混ざる歌声を拾いながら、暫く覚醒と微睡みとを繰り返す。不明瞭な意識が浮上した際、見慣れた窓から雨水に煙るグラウンドを視界に入った。すると、いよいよ目蓋は重みを増して、クロウの記憶はそこで一度完全に途切れた。
次に覚醒した時は、もう歌声は止んでいた。雨は相変わらず降り続けている。少し肌寒い。
恐らく、クロウが小さく身体を震わせるのと、肩に柔らかな体温が触れたのとは、殆ど同時だった。それから、雨音に掻き消されそうな程控え目に、クロウの名前を呼ぶ声がした。
クロウ先輩。クロウ先輩、と繰り返し。敬語も敬称付けも要らないと告げてから一月以上も経つのになかなか抜けきらないお行儀の良い言葉遣いが、雨音と共に心地好く鼓膜を震わせる。もう少しその声に耳を傾けていたかったので身動ぎをせずに居ると、諦めたのか声の主は口をつぐんでしまった。流石にバレたか。諦めてクロウが身体を起こそうとしたそこで、また名前を呼ばれた。
「クロウ」


11/18 『いっそ心中する?』

「いっそ心中するか」と後輩が発した音を咀嚼し終えると、クロウはその歴青炭に似た黒い頭を叩いた。脊髄反射だ。あまり強く叩いたつもりはなかったが、頭を抑えて恨めしく見上げてくる視線が僅かに揺れている。
「小テストの点が悪かったくらいで馬鹿言うな」
取り敢えずごまかしておいた。


11/19 『ただし、ご注意を。』

昔、人間眠る時は幾らか表情が軟らかくなり、幼く見えるという話を誰かに聞いたことがある。身体を横たえたクロウを見下ろして、リィンはそんなどうでも良いことを思い出した。恐らく、今が意趣返しを実行する好機だ。思い立ち、上体を屈めて覗き込むと、顔面を鷲掴みにされた。
気付かれてた。


11/21 『一生のお願い』

人を殺した。装甲車に乗った人間も、生身の人間も、モニター越しに武器を振るう分には一つとして感触は返らず実感が伴わない。それでも確実に、今日、そして明日も人を殺すのだろうな、とクロウは思った。そして同じように、もう一人の起動者も東部で戦火に曝されいるのだろうかとも思った。だから、


12/22 『きっとそれで正解』

明滅を繰り返す不明瞭な視界の中で、濡れた菫色が目を引いた。
影を落とす睫毛が瞬くと涙が溢れて頬を伝い、流れ落ちる。背中に添えられた掌に強く力がこもるのが分かった。
瀝青炭の色に似た髪に手を伸ばしながら、間違いなく正しい答えを選んだことを確信し、クロウはそっと目を閉じた。


12/29 『同属嫌悪』

カレイジャスとの通信が切れると、男は満足そうに息を吐き背凭れに寄りかかった。落ちかかる金糸の間から冬の湖の色に似た青い双眸が覗く。
「さて。後は彼らに任せ我々は我々の成すべきことをしよう」
柔和な笑みを深くする男を見下ろしながら彼の異母弟の胸中を慮ってクロウは肩を竦めた。


12/30

十月下旬ともなると、秋も深まり肌寒さを感じる季節になる。格子のように枝を伸ばす街路樹の間から、薄ら白く高い空を流れる鱗雲が見えた。
学院の敷地へと伸びる緩やかな坂道を歩いていると、緑色の制服に身を包んだ生徒が第二学生寮から出てくるところだった。クロウと同じ二年の男子生徒だ。
「よぉ、クレイン。これから部活か?」
「ああ。クロウは技術棟か?」
問いながら、男子生徒の視線はクロウの抱える段ボール箱へと注がれている。
「おうよ。そろそろ借りたブツを返しとかねぇとな」
箱の中にはジョルジュから借りていた雑誌や工具の他に、トワやアンゼリカから借り受けた彼女たちの私物も入っている。
「そうか。来月には戻ってくるんだったな」
眉根を寄せながら苦笑に近い表情を浮かべて男子生徒が言った。


12/31 『愛してはいるんだけど』

「一緒には生きられない」


1/4 『愛してるも役不足』

リィン君「愛してる、程度で足りるものか。だから必ずお前を取り戻してみせる、クロウ!」
クロウ先輩「……なぁ、そこに俺の意志は?」
リィン君「お前の意思なんて俺のものになってからの話だ!」
クロウ先輩「よし。殴る」

こうですか分かりません。


1/4 『幸せにするよ』※ガイクロ

「俺たちの思う幸せと帝国人の幸せの定義というものはそもそもの前提に微妙なズレがあるようだ」
開け放した窓辺で頬杖を突いたままガイウスが言った。グラビア雑誌から顔を上げることなく、クロウは曖昧に相槌を打つ。
「ほんじゃま、取り敢えず人間の三つの根本規定から切り込んでみれば?」


1/9 『甘やかせる権利』

意志の強い光を宿す、朝焼けの薄紅が胡乱な視線を向けてきた。
二つ年下の期間限定のこの同級生は頻繁にこうした目で見上げてくる。それが彼なりの甘えだと云うことにはすぐに気が付いた。気が付いたが、良くない。
「良くねぇよなぁ」
呟きながら、クロウは跳ねる黒髪に手を伸ばした。


1/12 『反則だらけ』

お前なぁ。目尻を吊り上げた後輩が抗議の声を上げた。くつくつと喉を鳴らしてクロウは笑う。お前ね、と頭の中で彼の言葉を反芻しては笑う。
確かに呼び捨てにして構わないと言った。敬語も不要だと告げた。だが、この上目遣いと暴言は反則だ。
甘えられているのだと自惚れたくなる。


1/13 『距離のつかみ方』

「お前、俺に対して横暴が過ぎんじゃねぇ?」
足元で踞ったクロウが言った。リィンが蹴り飛ばした脛がまだ痛むのだろう。
「反省はしている。すまない」
「おう。まぁ、いいけどな。オレ、お前に対してはマゾだからよ!」
彼がこの調子なので、謝罪も反省もあまり役に立ちそうにない。


1/13
あなたは『自分はクズだから好きになってもらえない、って思ってるけどすでに両想いな』さとう宅のリィンのことを妄想してみてください。

自己評価の低さを咎められることがある。指摘するのは刀の師であったり、クラスメイトだったりする。だが、それは仕方がないことだ。諦念で以て、リィンはその事実を受け入れている。そうした姿勢も恐らくは、苦言を呈する彼らを苛立たせる一因であるのは間違いない。そして文字数が足りないから終る


1/13
あなたは『恐る恐る伸びてくる手に擦り寄る』さとう宅のクロウのことを妄想してみてください。

躊躇いがちに伸ばされた手はクロウに届く前に静止した。見上げる菫色の瞳が不安げに揺れている。すまない、と呟いて彼は手指を引いた。その手を追って絡め取り、唇を寄せる。
「何でお前、俺に好かれるわけねぇとか勘違いしてるんだ?」
唇に震える指の感触が伝わる。
うん。悪くない。


1/14 『あの日から一番遠い僕ら』

蝶が翔んでいる。赤い蝶だ。淡く鱗粉を散らしては視界の端を掠めて翔んでいく。その向こうにリィンの姿を見留めた。
結局、こんな所にまで来てしまった愚かで愛しい後輩だ。あの頃とは何もかも違えてしまった今でも、確信を持ってそう言える。
彼だけは、死なせる訳にはいかなかった。


1/14 あなたは『この人には敵わないってわかってるからせめて追いついて隣にいたいと思っている』さとう宅のリィクロのことを妄想してみてください。

悔しい、とリィンに言われたことがある。ブレードか何かをやっていた時だったと思う。因みに俺が勝った。気持ちは解らないでもない。俺も祖父さんに負けたら悔しかったし……ああ。まぁ。祖父さんが死んだ時もそうだな。
でもまぁ。いいじゃねぇか今くらい。どうせ置いて行かれるのは俺の方だ。


1/14 あなたは『喉から手が出る程欲しがってる事がばれたら多分逃げられてしまうんだろうなあ、と分かっているのでそんなヘマはしない』さとう宅のリィンのことを妄想してみてください。

「この二ヶ月半、何処で何を間違ったのか、ってそればかり考えていたよ」
不思議な灰色の光沢に背中を預けてリィンは空を仰いだ。騎神は何も言わない。静かに先に続く言葉を待っているようだった。
だが、その先の言葉は持たない。結局、伸ばし続けた手は何も掴むことが出来なかったからだ。


1/14 あなたは『周期的に全力で人を甘やかしたくなる』さとう宅のクロウのことを妄想してみてください。

扉が完全に閉じたのを確認して、そろそろと息を吐く。手袋越しの感触がまだ手の平に残っていた。その感触を消すように、そのまま髪を掻き回す。
正直、やり過ぎた。浮かれてましたごめんなさい。一つ妥協するとなし崩しに駄目になる。甘やかすのが久しぶりだったからなんて言い訳にもならない。

1/14 あなたは『名前を呼んだだけなのに嬉しそうな顔をする』さとうさん支援のリィクロのことを妄想してみてください。

二階に上がると201号室の扉の蝶番が軋む音が聞こえた。跳ねる黒髪が覗く。
「リィン」
反射的に呼び止めた自分に驚いたのは一瞬のことだった。呼び止められた後輩が嬉しそうに扉の影から顔を出す。だからクロウも呼び止めた理由を考えるのはやめた。
10月29日、今夜くらいは。


1/15 『憎ませてもくれない』

ディルとマスタードの味が口の中に残っている。先輩だった男は今はリィンに背を向けて、窓の外を眺めていた。過去を語る口調は抑揚を欠いていて、そこから彼の感情は読み取れない。
言葉に耳を傾けながら考える。彼だけでなく、存在して然るべき感情の伴わない自分の在りように困惑したからだ。


1/16 『自分のモノには名前を書きましょう』

「クロウ!」
凄まじい勢いで扉が開いた。俺、鍵かけといた筈なんだが。蝶番吹っ飛んでんぞ。そうきたか。
おはようさん。寝台の上で胡座をかいたまま手を上げる。リィンは大股で俺の前まで歩み寄ると前髪を上げて額を見せた。
「名前を書くな!」
あらら。油性はちとまずかったか。


1/18 『亭主関白』

「戻って来て貰う」と後輩だった少年に去り際に言われた。十月の終わりのことだ。
次に顔を合わせたのは一月半経ってからのことだ。その時には「取り戻す」と言われた。
いつから俺はお前の物になった、と頭に浮かんだが言わなかった。ただ、彼と結婚する相手は大変だろうな、とは思った。


1/19 『どこか知らない場所へ』

「誰も知ってる奴の居ねぇ、どっか知らない場所に行きたいとか思ったことあるか?」
腰に腕を回す男に耳許で囁かれた。グリップを握る手が思わず緩む。帝都で交わした歌姫との会話の延長だったのかも知れない。
「ないけど……お前となら、いつか行ってみても良いかも知れないな」


1/19 『仕事柄、昔和尚にこんなことを言われたことが~(中略)~甘く匂うものは何かが「いる」らしいとのことです』のRTからインスピレーション

穏やかな顔をしている。生前の彼は表情の豊かな男だった。だから、こうして顔の造りをまじまじと観察する機会は殆んどなかったように記憶している。
物言わぬ相貌を見つめながらリィンは深く息を吸った。鼻腔を甘やかな香りが突く。不意に、東方の謂れを思い出した。
「……いるのか、クロウ」


1/20 『生き方は似ているのです』

リィンは愛情に対して懐疑的だ。本来なら疑うべくもない無償のそれらを根本的に信じることの出来ない彼に、クロウは憐れみを覚える。
愛情も、信頼も、全てかつてクロウも持っていたものだ。そして、同様のものが今のリィンの周りにも溢れていることを知っていたからだ。
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01.12.19:19

美しい蒼の時間

学生会館を出ると、外は相変わらず雨が降っていた。朝から厚い雲に覆われていた薄ら白い空は、六限目のメアリー教官の授業を待たずに雨粒を零して今にまで降り続いている。日が沈む頃には雷を伴う激しい雨になる、と今朝から導力ラジオで流れていた予報は見事に的中したことになる。今夜は満月の予定だが、この分では見ることは出来ないだろう。大降りになる前に寮へ帰るべきだと判断し、リィンは手早く鞄の中から折り畳み傘を出して開いた。
 正門に差し掛かると校舎から見知った顔が出てきた。中世的な顔立ちの明るい赤毛の男子生徒と、褐色の肌を持つ男子生徒だ。どちらもリィンと同じ赤い制服に身を包んでいる。
 彼らもリィンの存在にすぐに気付いたようだ。
「リィン、今から帰るとこ?」
 小走りで近寄って来たエリオットに問われてリィンは頷く。
「ああ。二人も今日は部活は終わりか?」
 エリオットとその後に続くガイウスとを交互に見遣り、リィンも訪ねた。
 「そうだな。生徒は殆んど帰ってしまったようだ。この雨だからな」僅かに首を傾げてガイウスが言った。「うちの部長はまだ残っているが」
 一人部室で作品に向かう彼女の姿が容易にリィンの脳裏に過ぎる。エリオットも似たような想像をしたのか、眉根の寄った笑顔を向けられた。石と向き合う孤高の変人の姿は、美術部内外に知れ渡っているようだ。――そこで不意に、奇妙な既視感を覚えて返すべき言葉を見失う。だが、すぐにその正体に思い当たり、リィンは口を開いた。
「そういえば、Ⅶ組の教室は覗いたのか?」
 問うと、エリオットはただでさえ大きな丸い目を更に大きく見開いて、ゆっくりとひとつ瞬きをした。その表情が全てを物語っており、今度はリィンが苦笑を溢す番だった。
 最後の授業を終えて各々の部活に向かうクラスメイトを見送りながら、最後までリィンは教室に残っていた。正確にはリィンと同じように部活動に所属のない、最近赤い制服に袖を通したばかりの上級生と共に居た。ただし、彼はメアリー教官の持参した蓄音機が歌姫の歌声を紡ぎ、その合間を縫うような雨音の響く六時限目の時分から机に突っ伏したままだ。傍らに立ち、何度か声を掛けたが目を覚ます様子はなく、その肩に手を掛けようとしたところでリィンのARCUSが鳴った。呼び出しはトワ会長からのもので、いよいよクロウにかかずらっては居られなくなり、リィンはそのまま彼を一人残して教室を後にしたのだった。
「先に寮に帰っているのなら、それはそれで構わないんだが」
 クロウを一人教室に残してきてしまった手前、このまま素知らぬ顔をして学院を立ち去るのは忍びない。リィンは二人に肩を竦めて見せてから、正門に向かいかけた踵を返す。自業自得なんだし放っておけば良いのに、という苦笑交じりに発せられた辛辣な真理は聞こえないふりをした。

 部活動に励む生徒で賑わっていた放課後の校舎は、差し迫る日没を前に静まり返っていた。廊下には規則正しい一人分の足音と、窓を叩く雨粒の音だけが響いている。グラウンドの喧騒が届かないことも、この蕭条とした空気に一役買っているのかも知れない。
 階段を上がり曲がった先の右手側の窓からは、雨に打たれる色付き始めた木の葉が見えた。窓に近付いて中庭を見下ろしたが、当然のことながら誰も居ない。晴れの日であれば猫の子供のような風体で中庭のベンチを占領しているクラスメイトの姿もあっただろうに、とほんの少しの名残惜しさを自覚しながらリィンは窓を離れた。
 それから、誰と擦れ違うこともなくⅦ組の教室の前に辿り着いた。扉一枚隔てた向こう側の気配は、雨音の所為か酷く曖昧で捉え難い。試しにノックをしてみたが教室の中から返事はなく、代わりに犬の鳴き声のような低く轟く雷鳴が鼓膜を打った。
「入ります」
 声をかけて扉を開ける。明々と導力灯の灯る教室の中を見渡すまでもなく、一番後ろの列の窓際の席に赤く丸まった背中を見留めるとリィンは何故だか小さく息を詰めた。クロウだ。
 教室に入り、後ろ手に扉を閉める。傍らに立っても、故郷の雪山を思わせる色素の薄い頭は微動だにしなかった。彼の表情は腕を枕にうつ伏せているので判らない。
「クロウ先輩」
 詰めていた息を吐き出すと共に名前を呼ぶ。だが、クロウが起きる気配はない。
 視界の端で薄暗く沈み始めた空に煌めく閃光を捉える。つられるようにして窓の外に目を遣ると、風が強くなってきたのか伸びた枝葉が大きく揺られている様子が見えた。次いで、雷鳴が轟く。まだ距離はあるが、先ほどまでより雷雨は近付いているようだった。折り畳み傘一つでは矢張り心許ないかも知れない。
「クロウ先輩、起きて下さい」
 幾らか語気を強めて、再度クロウの名前を呼ぶ。それでも、決して小さくはない筈の呼びかけにも彼は反応を示さない。
 少し迷ってから、リィンは赤い制服に包まれた肩に手を置いた。クロウ先輩。名前を呼びながら肩を揺り動かす。だが、薄ら白い髪の先はリィンの力に任せて肩に置いた指先を掠めるばかりだ。クロウが起きる気配はない。
 こうしている今も、窓の外では徐々に雨足が強さを増していた。クロウの名前を呼ぶ何故だか細いリィンの声など、発した傍から耳に届く前に掻き消されているのではないかと思える強さだ。
 また何処かで、雷の落ちる音がした。空は光ったかも知れないし、光らなかったかも知れない。窓から外を見ていれば稲光が見えたかも知れない。ただ、その時リィンは少し癖のある銀髪の、その合間から覗く彼の項を眺めていたので全ては憶測に過ぎない。
 気が付けば覚醒を促す意図で以ってクロウに触れていた手は動きを止め、力なく肩口に添えられるだけに留まっていた。その、幾重かの布を隔てた向こう側に、この項と同じ色をした彼の膚がある。手の平には更にその下の、肉と骨の感触と温度とが触れていた。不意に、口の中の渇きが意識される。彼に触れていない方の手は拳を固めていて、指先まで冷えていた。不思議に思いながら、リィンは汗を握る拳を開いた。何の変哲もない見慣れた自分の手の平だ。そしてまた改めて、彼の項に視線を落とした。制服の赤色とのコントラストの所為か殊の外白く、頼りなくリィンの目には映った。
 肩口に置いた手の平を浮かせて、毛先を掠め、指先を伸ばし掛けて、やめる。一歩、後ろに下がることでクロウから距離を取り、そうしてリィンは小さく溜め息を吐いた。
「……起きてるんですよね?」
 軽く頭を左右に振って、リィンは言った。確信はない。ただの願望だ。そして矢張り、彼から返される言葉はないようだった。
 クロウの前の席の椅子を引く。そのまま腰掛けて背凭れに肘を突く。肩越しに見る窓の外は、厚い雨雲の所為か随分と暗くなっていた。
「……起きて下さい、クロウ先輩」
 鈍色の空を眺めたまま、リィンは言った。厚い雲の、その向こう側の月を想う。
「クロウ先輩」
 もう一度呼びかけた。覚醒を促すには小さ過ぎる、頼りない声量だ。けれどそこで漸く、クロウは僅かだが反応らしい反応を見せた。微かに身じろいで、頭が傾く。そうすることで、落ちかかる長い前髪とトレードマークであるとも言えるバンダナの間から彼の目許が覗き見えた。一日の終わりの陽の色に焦げる空によく似た印象的な赤い眼は、今は目蓋に閉ざされている。起きる気配のない彼の様子に落胆と同時に安堵を感じながら、リィンは再び窓の外へと目を移した。
 そうしてリィンが黙り込んでしまうと、あとはもう導力ラジオから流れるノイズのような雨の音が聞こえるばかりの静けさが教室を支配した。窓から見える景色の殆どは宵闇に溶けて、その輪郭を曖昧にぼかしている。月は見えない。当たり前だ。それでも確かに、雨の煙る視界の先、或いは見上げる雲の向こう側には、星が瞬き、月の煌めく夜空が広がっている。ただそれだけの事実が、今は不思議に思えてならなかった。例えばそれは、無為な呼びかけを連ねるという行為にも似ている。
「――クロウ」
 思い至ると、意図せず彼の名前を口にしていた。発してからその事実に気付き口元を押えるのと、重く空を埋め尽くす鉛色の雲間にリィンが光を見留めるのとは、殆んど同時のことだった。
 月だ。直感的に断じて腰を浮かせるリィンの腕を、誰かが掴んだ。慌てて振り返ったそこで、閉ざされていた筈の紅い視線とかち合う。深い赤色がいつもより鮮明に印象付けられたのは、窓の外が一際鮮烈に輝いた為だ。
 落ちた、とリィンは思った。
 教室の中が真昼の明るさを取り戻し、間一髪入れず校舎全体を震わせるかのような轟音が轟く。導力灯が二度、三度と明滅を繰り返した後、教室は幽冥と1/fゆらぎに包まれた。
 いつもなら、夕焼けと夜の空とが混ざり合う黄昏時の地平線に似た色をした二つ年上の同級生の虹彩は、今は彩度を欠いて濃い群青色に見える。まるで深い夜の底のようだ、とリィンは思った。
その見たことのない色をした眼差を、リィンは声を発することも、腕を掴む彼の手を振り解くことも忘れて見つめた。やがてクロウはくつくつと喉を鳴らして笑い、緩く頭を振ってリィンの腕を解放した。
「……やっぱり、起きてた」
 意思に反して震える声を、息を吐くことで誤魔化しながらリィンは言った。机に預けていた上体を起こすと、クロウは肩を竦める。
「いやいや。すっげぇ寝てたって。食後にメアリー教官の授業とか、マジで殺しに掛かって来てるとしか思えねぇわ」
「クロウ、の場合は……食後とかメアリー教官の授業とか関係ない気がする、けど」
 軽口一つとってみても拭えないぎこちなさをリィンは胸中で毒づいた。導力灯が落ちて間もない薄闇の中ではクロウの表情までは読み取れない。だが、背凭れに体重を乗せ頭の後ろで手を組む彼からは微笑むような気配が伝わってきた。
「笑うなよ」
 何となく居心地が悪くなり居住まいを正しながらリィンは言った。聞いているのかいないのか、クロウはが今度は小さく声を上げて笑う。そして窓の方を向いた。閃光の中で一瞬、彼の輪郭が浮かび上がる。
「さっきよか遠いか」
「ああ。……雨足は相変わらずだけど」
 相槌を打って空いた間は、頭の中で一度組み立てられた余所行きの言葉から装飾を削ぎ落とすのに要した時間だ。
「だな。誰かさんが放置プレイかましてくれてる間にどしゃぶりじゃねぇか」
 何処か遠くを眺め遣りながら悪態を吐くクロウの声音は柔らかい。窓を伝う雨だれが、斑模様の影になって落ちる彼の横顔から、リィンも窓の外へと視線を移した。彼の言う通り、外は酷い雨と風だ。時折雲間を走る雷に照らされて、光の槍のような雨が降り注いでいる。
「灯り、点かないな」
「んー……さっきの雷で導力ケーブルやられたんじゃねぇーの?」
「そんな他人事みたいに。これからこの雨の中を帰るんだぞ、解かってるのか?」
 折り畳み傘程度で凌げるとは到底思えない雨足に、気鬱になりながらリィンは言った。外を見ていても気が滅入るばかりなのでクロウへと向き直ると、彼も丁度頭の後ろで組んだ手を解いたところだった。
 「何だ何だ。お前、帰んの?」机に頬杖を突きいて笑いながらクロウは言った。「ガッツだな!」
 眩暈がした。こめかみを押えて、リィンは俯く。
「俺は、クロウを迎えに来たんだが」
「おお。ゴクローサン」
「お前なぁ」
 顔を上げながら、思わずリィンは呻いた。
確かにクロウを教室に残してきたというリィンの勝手な罪悪感は、彼の知るところではない。だが、それにしてもあまりにも空回りが過ぎるのではないか、と失望にも似た落胆をリィンは覚える。その落胆が身勝手な期待に起因する自覚もあるものだから、尚のこと性質が悪い。――諸々のそうした自嘲の念は、顔を上げた途端に何処かへ追い遣られてしまった。
 頬杖から僅かに顔を浮かせたクロウが笑みを潜めてリィンを見下ろしていたからだ。心なしか、その表情には驚きの色が見て取れる。
「クロウ?」
 まだ少し、舌に馴染まない名前をリィンは呼んだ。それから、クロウの頬杖の意味をなくした腕が伸びて、リィンの頭に乗せられるまでの、その過程を見守った。妹やⅦ組の年下の女生徒の頭に、リィンも時折このようにして手を伸ばすことはあるので、意図は判らないでもない。髪を撫でられる感触はあまり馴染みのないものだが、悪い気はしない。悪い気はしないが、困惑はした。理由が判らないからだ。
「えっと、クロウ先輩?これは何か意趣返しとか、そういうことですか?」
「んにゃ?特に理由はねぇよ。っつーか何で敬語復活?」
 もう一方の手も伸びてきて、両手で髪を掻き混ぜられる。特に抵抗することもなく暫くはクロウのさせたい好きなようにさせていたが、段々と奇妙に落ち着かない心地になってとうとうリィンはその手首を掴んだ。
「理由がないならやめて下さい、クロウ先輩」
「どうした~?笑顔が怖いぞ、リィン後輩」
 嵐の薄暮に不似合いな程の明朗な笑顔を浮かべたクロウは、リィンが掴む手首を逆手に絡め取ってきた。そのまま引き寄せられたと思ったら、次の瞬間には頭を抱え込まれていた。
「帰るなんてつれないこと言うなよ。お兄さんと一緒に雨宿りと洒落込もうぜ?」
 言葉の意味を理解するより先に、耳元に注ぎ込まれた吐息の熱さに驚いた。慌ててリィンはクロウを引き剥がすと距離を取る。その拍子に引っくり返った椅子の足が向こう脛を強かに打ち付けたがそれどころではない。
「お前、今すっげぇ音したけどだいじょう――」
「近い!」
 腰を浮かせたクロウの手が届く前にリィンは声を張り上げた。失敗した、と即座に思いはしたが遅かった。彼が呆気に取られたかのように静止したのは一瞬のことで、すぐに肩を震わせ始める。
 「そりゃあまぁ、そうだろうなぁ」ひとしきり笑ってから椅子に座り直してクロウは言った。「お前、パーソナルスペース重視する性質っぽいし?」
 肩を竦めるクロウを、リィンは見下ろす。抑えた耳はまだ少し熱い。
「……まぁ理由も、分かんなくもねぇし」
 でも、とクロウはそこで言葉を切った。雨の影を映した昏い色の双眸がリィンを静かに見上げてくる。それから、一度開きかけた口を閉ざして彼は視線を彷徨わせた。何か、言葉を選んでいるようでもあった。頭の回転が早くテンポの良い会話を好む彼にしては珍しい沈黙だ。だから、リィンはただ黙って先に続くだろう言葉を待つことにした。
「大丈夫だっただろ」
 ややあって、上目遣いにリィンを捉えながらクロウは口を開いた。問いではなく、断定だった。
 時折、クロウはこうした真摯な眼差しをリィンに向けてくることがある。その度にどうしてだか、リィンは酷く情けない気持ちになった。
「主語を話せ、主語を」
 溜め息と共に吐き出すと、リィンは倒れた椅子を起こした。
「わかんねーなら、それはそれで別に」
 改めてクロウの前に座り直す。彼は穏やかに微笑んで、それから窓の外へと視線を差し向けた。雨は変わらず降り続けている。
 分からない筈がなかった。
「ああ、大丈夫だった。……クロウのお陰だな」
 告げると、視界の端でうすぼんやりとした白色が揺れる。雨音にくつくつと喉で笑う彼の声が混ざった。
「はき違えんなよ?お前がレグラムでⅦ組の奴らに秘密を打ち明ける気になったことも、Ⅶ組の奴らがお前の秘密を受け止めることが出来たのも、そりゃお前達が五ヶ月掛けて培ってきたもんがあってこそだろーが」
 凡そクロウらしくない物言いだ。何となく、照れ隠しなら良いのに、とリィンは思った。
 横目でクロウの様子を伺う。「お。光った」と口許を緩める横顔は常と変わらないように見えた。続く雷鳴に耳を傾けながらリィンは目を閉じる。
「月が見えたんだ」
 黒い雲間に閃く、一瞬の光を目蓋の裏に思い描いた。
「いつ?」
「……さっき」
 口にしてみたら馬鹿馬鹿しくなって、リィンは小さく笑いながら目を開けた。
「少し考えれば解りそうなものなのにな。こんな雨の日に」
 今日が満月だということは知っていた。雨の予報を聞いて、少しばかり落胆したのも事実だ。だが、それだけだ。
「何で、月だなんて思ったんだろう」
 どうしても見たいと渇望していた訳でもない。だのに、停電の原因が雷であると指摘されるまで、リィンはあの時見えた光は月だと思っていた。あの時落ちた光は、月だったのだと信じて疑わなかった。
「なら、月でいんじゃねーの」
 それまで黙ってリィンの言葉に耳を傾けていたクロウが、不意に口を開いた。
「は?」
「月でいいじゃねぇか。そういうことにしとけって」
 そう言ってクロウは手を伸ばすと、リィンの髪を掻き混ぜた。だが、声音には何処か不穏な気配が漂っている。
 困惑するリィンに気が付いたのか、すぐに眉尻を少し下げてクロウが笑った。
「お前は我慢上手の良い子ちゃんだからな。傍から見てっと、まぁ、色々と……思うところがあんだよ。お兄さんにも」
 思うところがあっても、思うところの詳細を口にする気はないらしい。
 「何にも欲しがんねぇ奴は、何にも手に入んねーぞ」あまり見たことのない類いの笑みを浮かべたままクロウは言った。「だからちゃんと欲しがって見せろ、リィン」
 こうして時折真摯な眼差しを向けてくる二つ年上の男は、矢張り時折何かのついでのように難解な問いを投げてくる。今もそうだ。リィンには欲しいものなんて何もない。家族が居る。友人も、先輩も居る。これ以上望むべくもない程に学院に来てからのリィンの日々は輝いて充たされている。だのに、彼はこんなことを言う。
「そんなこと言われてもな……」
 途方に暮れながらリィンは髪を撫でるクロウの手を取った。節の目立つ大きいが白い手だ。銃を扱う人間にしては珍しいところの皮膚が固くなっている。それは、リィンの指の付け根にある胼胝に似ているような気がした。

08.26.22:17

無題

08.26.17:50

PJB

【イオン・ブルートシュース】
年齢:18歳
種族:アイオライト
身長:178cm
能力:細胞操作

・ファイブロウ在住。
・フローライトの弟が居たが、3年前に他界。
・基本的にどの宝石にも好戦的、というか喧嘩腰。クオーツに対しては顕著。ただし一部仲の良い宝石にはわりと世話焼き。
・弟の死を境に、「フローライトしか店が持てない」という今の宝石箱の在り方に疑問を持っている。その為に貧富の差が広がることを懸念している。
・前述の理由から、為政者としての女王の手腕に不満があり、女王が嫌い。クオーツの出現に対して手を打たない一方、混乱する宝石箱をそのままに毎年恒例の舞踏会とか頭おかしい、トカナントカ考えてる。
・ただでさえアズライトとアイオライトとフローライトの意識の違いから平和とは言えない宝石箱に、更にクオーツという異分子が入ってきたことが不安。これで益々三者の関係が悪化したら嫌だなぁ、とか考えてる。それなら手当たり次第クオーツを殺した方がいいと思ってる。
・その一方でもしフローライトの弟が生きていたら、クオーツの存在を気にしただろうな、という思いがある。死んだ弟が出来なかったことを代わりにやりたいという思いもある(お店はアイオライトだから持てなかったけど)。その為に結果破砕することになっても仕方ないと、無意識に考えている。

●弟と2人で暮らす為に13歳くらいまで身体も売ってた。14歳~は稼ぎが悪くなったのでやめたのと、弟が死んで自分一人になったので必要なくなったのと。
●メメント・モリ(後述)とは弟が死んだ直後に会っている。せめて弟の記憶だけでも残そうと2人(正確には殆どイオン1人)で貯めたお金で見世物小屋のフローライトを訪ねるが足りず、フローライトを殺害しメメント・モリを連れ出した。弟の記憶を残したかったと同時に、若干メメント・モリに自らの境遇を重ねた模様。
●心の何処かで弟さえ居なければ自分はもっと自由に生きられるのに、と弟を疎ましく思っていた節があり、そんな自分の思いが間接的に弟を殺したんじゃないか、と自責の念に駆られっぱなし。


【笛吹 瑩[ウスイ アキラ]】
年齢:19歳
種族:クオーツ(日本人)
身長:180cm

・自己主張が苦手で、あまり自分の身の上話をしたがらない。
・元の世界で色々やらかしてきた為に未練はない。っつーか最後の晩餐真っ最中だったので宝石箱でのことはその延長上のことだと考えている。
・宝石箱の住人には比較的友好的。それでもあわよくば道連れにしたかったり、アイオライトは怖かったり。クオーツにも露骨に嫌悪感を示すことはない程度に面の皮は厚め。
・基本的に我慢と忍耐、努力と根性で頑張ってる。他人の機微に聡く、最終目的(クオーツを苦しめる為のラピスラズリ抹殺)の妨げにならない限りは自身の欲求より相手の願望を優先する節がある。そういった所謂「我慢癖」は特殊な家庭環境に由来し、自己主張が苦手な現在の人格形成に影響している。
・異母姉を見下すことで独りで居ることに耐え、またいつかは報われることを信じて鬱屈とした思いが蓄積され続けてきたものの、自身がクラインフェルター・シンドロームであることを機に唯一の理解者だった彼女にも別れを告げられた。他者の手を借りなければ生きていけない馬鹿女、と姉を見下していたが自分も見下していた彼女と同じ「女」だということにかなりダメージを受けている……と、思い込んでいるが実際は寧ろ自らの境遇の寄りどころ(子供)の喪失に因るところが大きい。
・どの道自分は宝石箱で殺される(死ぬ)んだろう、と考えておりアキラ自身も自分を餌にすることも辞さない構え。志半ばで死んでもいいや、くらいの気の持ちよう。勿論、出来ればきっちりラピスラズリは殺せるに越したことはないけど。でも、どうせ死ぬならアズライトに殺されたいと思ってる。アズライトならクオーツ(自分)を殺したら破砕確実なので、死ぬのも寂しくないや!トカナントカ。
・……とはいえ、自分を殺そうとしたアズライトが自分の目的以上に大事な存在になってしまっていたら、きっと改心するんだろうなと。

●中3のときにお祖母ちゃんが蒸発している。よく分からない台所爆弾やレゲー趣味、社交ダンスは全部祖母ちゃん譲りのお祖母ちゃんっこ。お祖母ちゃんはスナックのママで母方の祖母。娘の浮気を快くは思っていないものの自分のことは棚上げしてアレコレは言えなかった様子。養子になった後も度々会ってた。

07.03.23:24

PJB

イオン・ブルートシュース

0歳
ファイブロウで売春をし、生計をたてていたアイオライトの母親から生まれる。父親は不明。

3歳
母親が若すぎた為に育児能力がなく、捨てられる。ファイブロウを根城にするホームレスの老人(アズライト)に育てられる。

7歳
老人が他界する。

8歳
ジェットでフローライトの少年と知り合い仲良くなる。少年の父親は既に他界しており、生活費の為に母親は夜の仕事に出ているとのこと。しばらくして、彼の母親が自分の母親であることが判明。

9歳
母親が新しい男と暮らす為に少年(弟)を捨てようとしていることを知り、自身の素性を明かした上で詰め寄る。逆上した母親に殺されそうになったところを、弟が母親を殺すことで助かる。弟と2人で生きていくことを決める。

10歳
弟と2人で生きていく為に、色々手を出す。中には汚いお仕事もあったので弟には内緒。

13歳
弟が「将来お店を持って兄さんに楽をさせてあげたい」と言い出す。超嬉しい。お兄ちゃんますます頑張ろうと思う。ますます頑張ってお金を貯める。

15歳
お店を持つ為の資金としてぼちぼち纏まったお金が出来た頃、何処かで噂を聞きつけたアズライト・アイオライトのホームレス集団に強盗に入られ、弟を殺される。

18歳
これまでの経緯から特定の「宝石」を憎んだり恨んだりすることはないが、現在の政治体制には不満がある様子。宝石同士の争いすら絶えないのに、新たな争いの火種になり兼ねないクオーツの出現には危機感を持っており、それが政治体制への不満が相俟って攻撃行動として現れている。


笛吹 瑩

0歳
●医者の父親と母親、知的障害の姉との4人家族。
・医者の父親が浮気相手との間に作った子供。この時点では母親と二人暮らしで、苗字も笛吹ではなく時任。

11歳
●父親の浮気が発覚。
・実母が異母姉である笛吹昶[ウスイアサヒ]の殺人未遂事件を起こし逮捕される。
・アサヒは昏睡状態になり、アキラの中で「姉には知的障害がある」という設定(思い込み)が出来たのはアサヒの記憶がここで止まっている為。

12歳
●父親は家に寄り付かなくなり、母親は姉に掛かりきりになる。
・笛吹の家の養子になる。
・アサヒとして継母には扱われ、そうでない(女装してない)ときは暴力を振るわれる。

15歳
●寮のある高校に進学し、家を出る。同時に彼女も出来て念願のリア充ライフ。家庭事情の面倒くささが彼女への依存に拍車をかける。
・女装してアサヒのフリをするのも限界なので家を出る。

18歳
●ことごとく受験に失敗し、親には諦めて就職しろ、と言われるものの彼女の後押しと反抗心からバイトをしつつ浪人生活スタート。家には帰りたくないのでついでに安アパートで一人暮らし。仕送りぷまい。
・受験失敗は父親への嫌がらせ。
・父親はアキラに負い目がある。

19歳
●バイト先で骨を折り、状況の不自然さから念の為にと精密検査を受けたところ骨粗しょう症が発覚。そこから芋づる式に自身がクラインフェルター症候群であることを知る。親には打ち明けられず、彼女には別れを告げられ、クラッシュした豆腐メンタルからバイトを無断欠勤していたところ解雇を言い出されたのが6月24日のこと。いよいよ自殺に踏み切ろう、と最後の晩餐の為にハーゲンダッツと吉牛の牛丼を買いに出掛けそのままうっかり宝石のアーチをくぐる。
・クラインフェルター症候群であることそのものよりも、それによって自身が子供を作ることが難しい身体であることにショックを受けている。


能力:細胞操作

【概要】
 自身の血(結晶)を触媒とする能力。対象の体内に浸入させることにより細胞の活動停止・暴走・活性化等を促す。浸入は少しでも血が対象の肌に触れればそのまま浸透する。

【発動】
 発射→浸入→発動の流れで、浸入さえさせれば発動は任意のタイミングで可能。潜伏期間は浸入させた血の量に左右され、多ければ多い程長く体内に留まることが出来る。最短で3日、最長で1ヶ月程度。また、潜伏期間中のデメリットはない。能力発動中のシフトタイムを考慮し、安全を確保してからの使用や脅迫といった使い道もある。

【効果】
 本来は対象の細胞の自然治癒力を活性化させて傷を癒やしたり、癌細胞をアポトーシスに誘導したりという、治療に特化した能力。ただし、本人の気性も相俟って専ら攻撃的な用途で使用されている。だが、宝石箱の住人ではないクオーツの身体構造は理解が追い付いていない為、効力は薄い。

【射程】
 乱戦時は投擲程度。ショットガンを使用して弾に自身の血を込めた場合は飛距離、範囲共大きく広がるが前準備と弾数に限りがあるので過信はしていない。他、球技に長けたクオーツや身体能力の優れたフローライトを頼ることでも射程は変わってくる。

【負荷】
 能力発動のデメリットは体組織の麻痺。対象の人差し指を壊死させれば自身の人差し指が麻痺し、対象の喉の炎症の治癒を促せば声が出なくなる。デメリットは能力発動中のみだが、臓器等の細胞を操作する際は部位によっては致命的なダメージを受ける。
 また、触媒が血液であることから多用は出来ず、わりと万年貧血気味。


【笛吹瑩の虚言】
・虚言というより、自身の過去すら捏造するレベルの激しい思い込み癖。
・本人が本気で信じていること、嘘という自覚のないものは「嘘を見抜く」って能力にはどう映るのかな。

×4人家族
○母子家庭2人暮らし、12歳から養子

×姉は自閉症
○異母姉は昏睡状態

×姉と性交
○継母と性交



宝石箱に来た時の……
・アズライト殺し
・殺されたクオーツ
・消えたアイオライト



使えそうなら。
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