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[06/30 海冥です…!!]

04.29.10:26

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  • 04/29/10:26

01.20.10:14

140文字SS

10/26 『こたえられない』

返事くらいしろ、と背中に声を投げられた。最初は聞こえなかったふりを、二度目は肩越しに声の主を睨み付ける。すると、故郷の雪深い山を想起させる薄ら白い髪の男が口の端を釣り上げて見せた。リィンは今一度男から視線を外すと口をゆすいでから言った。
「歯を磨いてる時くらい勘弁してくれ」


11/6 『不思議と心地よい雨音の中で 手を差し出して あなたは 「私はあなたに救われた。 」と言いました。』

雨の音に混ざって歌が聞こえる。かん高く弾む女の歌声だ。穏やかな子守唄とも、郷愁を帯びる童唄とも違う。仄暗い激情を内包しながら、それでも抑えきれない高揚感を帯びて跳ね躍るその歌を、クロウは確かに知っていた。
雨音に混ざる歌声を拾いながら、暫く覚醒と微睡みとを繰り返す。不明瞭な意識が浮上した際、見慣れた窓から雨水に煙るグラウンドを視界に入った。すると、いよいよ目蓋は重みを増して、クロウの記憶はそこで一度完全に途切れた。
次に覚醒した時は、もう歌声は止んでいた。雨は相変わらず降り続けている。少し肌寒い。
恐らく、クロウが小さく身体を震わせるのと、肩に柔らかな体温が触れたのとは、殆ど同時だった。それから、雨音に掻き消されそうな程控え目に、クロウの名前を呼ぶ声がした。
クロウ先輩。クロウ先輩、と繰り返し。敬語も敬称付けも要らないと告げてから一月以上も経つのになかなか抜けきらないお行儀の良い言葉遣いが、雨音と共に心地好く鼓膜を震わせる。もう少しその声に耳を傾けていたかったので身動ぎをせずに居ると、諦めたのか声の主は口をつぐんでしまった。流石にバレたか。諦めてクロウが身体を起こそうとしたそこで、また名前を呼ばれた。
「クロウ」


11/18 『いっそ心中する?』

「いっそ心中するか」と後輩が発した音を咀嚼し終えると、クロウはその歴青炭に似た黒い頭を叩いた。脊髄反射だ。あまり強く叩いたつもりはなかったが、頭を抑えて恨めしく見上げてくる視線が僅かに揺れている。
「小テストの点が悪かったくらいで馬鹿言うな」
取り敢えずごまかしておいた。


11/19 『ただし、ご注意を。』

昔、人間眠る時は幾らか表情が軟らかくなり、幼く見えるという話を誰かに聞いたことがある。身体を横たえたクロウを見下ろして、リィンはそんなどうでも良いことを思い出した。恐らく、今が意趣返しを実行する好機だ。思い立ち、上体を屈めて覗き込むと、顔面を鷲掴みにされた。
気付かれてた。


11/21 『一生のお願い』

人を殺した。装甲車に乗った人間も、生身の人間も、モニター越しに武器を振るう分には一つとして感触は返らず実感が伴わない。それでも確実に、今日、そして明日も人を殺すのだろうな、とクロウは思った。そして同じように、もう一人の起動者も東部で戦火に曝されいるのだろうかとも思った。だから、


12/22 『きっとそれで正解』

明滅を繰り返す不明瞭な視界の中で、濡れた菫色が目を引いた。
影を落とす睫毛が瞬くと涙が溢れて頬を伝い、流れ落ちる。背中に添えられた掌に強く力がこもるのが分かった。
瀝青炭の色に似た髪に手を伸ばしながら、間違いなく正しい答えを選んだことを確信し、クロウはそっと目を閉じた。


12/29 『同属嫌悪』

カレイジャスとの通信が切れると、男は満足そうに息を吐き背凭れに寄りかかった。落ちかかる金糸の間から冬の湖の色に似た青い双眸が覗く。
「さて。後は彼らに任せ我々は我々の成すべきことをしよう」
柔和な笑みを深くする男を見下ろしながら彼の異母弟の胸中を慮ってクロウは肩を竦めた。


12/30

十月下旬ともなると、秋も深まり肌寒さを感じる季節になる。格子のように枝を伸ばす街路樹の間から、薄ら白く高い空を流れる鱗雲が見えた。
学院の敷地へと伸びる緩やかな坂道を歩いていると、緑色の制服に身を包んだ生徒が第二学生寮から出てくるところだった。クロウと同じ二年の男子生徒だ。
「よぉ、クレイン。これから部活か?」
「ああ。クロウは技術棟か?」
問いながら、男子生徒の視線はクロウの抱える段ボール箱へと注がれている。
「おうよ。そろそろ借りたブツを返しとかねぇとな」
箱の中にはジョルジュから借りていた雑誌や工具の他に、トワやアンゼリカから借り受けた彼女たちの私物も入っている。
「そうか。来月には戻ってくるんだったな」
眉根を寄せながら苦笑に近い表情を浮かべて男子生徒が言った。


12/31 『愛してはいるんだけど』

「一緒には生きられない」


1/4 『愛してるも役不足』

リィン君「愛してる、程度で足りるものか。だから必ずお前を取り戻してみせる、クロウ!」
クロウ先輩「……なぁ、そこに俺の意志は?」
リィン君「お前の意思なんて俺のものになってからの話だ!」
クロウ先輩「よし。殴る」

こうですか分かりません。


1/4 『幸せにするよ』※ガイクロ

「俺たちの思う幸せと帝国人の幸せの定義というものはそもそもの前提に微妙なズレがあるようだ」
開け放した窓辺で頬杖を突いたままガイウスが言った。グラビア雑誌から顔を上げることなく、クロウは曖昧に相槌を打つ。
「ほんじゃま、取り敢えず人間の三つの根本規定から切り込んでみれば?」


1/9 『甘やかせる権利』

意志の強い光を宿す、朝焼けの薄紅が胡乱な視線を向けてきた。
二つ年下の期間限定のこの同級生は頻繁にこうした目で見上げてくる。それが彼なりの甘えだと云うことにはすぐに気が付いた。気が付いたが、良くない。
「良くねぇよなぁ」
呟きながら、クロウは跳ねる黒髪に手を伸ばした。


1/12 『反則だらけ』

お前なぁ。目尻を吊り上げた後輩が抗議の声を上げた。くつくつと喉を鳴らしてクロウは笑う。お前ね、と頭の中で彼の言葉を反芻しては笑う。
確かに呼び捨てにして構わないと言った。敬語も不要だと告げた。だが、この上目遣いと暴言は反則だ。
甘えられているのだと自惚れたくなる。


1/13 『距離のつかみ方』

「お前、俺に対して横暴が過ぎんじゃねぇ?」
足元で踞ったクロウが言った。リィンが蹴り飛ばした脛がまだ痛むのだろう。
「反省はしている。すまない」
「おう。まぁ、いいけどな。オレ、お前に対してはマゾだからよ!」
彼がこの調子なので、謝罪も反省もあまり役に立ちそうにない。


1/13
あなたは『自分はクズだから好きになってもらえない、って思ってるけどすでに両想いな』さとう宅のリィンのことを妄想してみてください。

自己評価の低さを咎められることがある。指摘するのは刀の師であったり、クラスメイトだったりする。だが、それは仕方がないことだ。諦念で以て、リィンはその事実を受け入れている。そうした姿勢も恐らくは、苦言を呈する彼らを苛立たせる一因であるのは間違いない。そして文字数が足りないから終る


1/13
あなたは『恐る恐る伸びてくる手に擦り寄る』さとう宅のクロウのことを妄想してみてください。

躊躇いがちに伸ばされた手はクロウに届く前に静止した。見上げる菫色の瞳が不安げに揺れている。すまない、と呟いて彼は手指を引いた。その手を追って絡め取り、唇を寄せる。
「何でお前、俺に好かれるわけねぇとか勘違いしてるんだ?」
唇に震える指の感触が伝わる。
うん。悪くない。


1/14 『あの日から一番遠い僕ら』

蝶が翔んでいる。赤い蝶だ。淡く鱗粉を散らしては視界の端を掠めて翔んでいく。その向こうにリィンの姿を見留めた。
結局、こんな所にまで来てしまった愚かで愛しい後輩だ。あの頃とは何もかも違えてしまった今でも、確信を持ってそう言える。
彼だけは、死なせる訳にはいかなかった。


1/14 あなたは『この人には敵わないってわかってるからせめて追いついて隣にいたいと思っている』さとう宅のリィクロのことを妄想してみてください。

悔しい、とリィンに言われたことがある。ブレードか何かをやっていた時だったと思う。因みに俺が勝った。気持ちは解らないでもない。俺も祖父さんに負けたら悔しかったし……ああ。まぁ。祖父さんが死んだ時もそうだな。
でもまぁ。いいじゃねぇか今くらい。どうせ置いて行かれるのは俺の方だ。


1/14 あなたは『喉から手が出る程欲しがってる事がばれたら多分逃げられてしまうんだろうなあ、と分かっているのでそんなヘマはしない』さとう宅のリィンのことを妄想してみてください。

「この二ヶ月半、何処で何を間違ったのか、ってそればかり考えていたよ」
不思議な灰色の光沢に背中を預けてリィンは空を仰いだ。騎神は何も言わない。静かに先に続く言葉を待っているようだった。
だが、その先の言葉は持たない。結局、伸ばし続けた手は何も掴むことが出来なかったからだ。


1/14 あなたは『周期的に全力で人を甘やかしたくなる』さとう宅のクロウのことを妄想してみてください。

扉が完全に閉じたのを確認して、そろそろと息を吐く。手袋越しの感触がまだ手の平に残っていた。その感触を消すように、そのまま髪を掻き回す。
正直、やり過ぎた。浮かれてましたごめんなさい。一つ妥協するとなし崩しに駄目になる。甘やかすのが久しぶりだったからなんて言い訳にもならない。

1/14 あなたは『名前を呼んだだけなのに嬉しそうな顔をする』さとうさん支援のリィクロのことを妄想してみてください。

二階に上がると201号室の扉の蝶番が軋む音が聞こえた。跳ねる黒髪が覗く。
「リィン」
反射的に呼び止めた自分に驚いたのは一瞬のことだった。呼び止められた後輩が嬉しそうに扉の影から顔を出す。だからクロウも呼び止めた理由を考えるのはやめた。
10月29日、今夜くらいは。


1/15 『憎ませてもくれない』

ディルとマスタードの味が口の中に残っている。先輩だった男は今はリィンに背を向けて、窓の外を眺めていた。過去を語る口調は抑揚を欠いていて、そこから彼の感情は読み取れない。
言葉に耳を傾けながら考える。彼だけでなく、存在して然るべき感情の伴わない自分の在りように困惑したからだ。


1/16 『自分のモノには名前を書きましょう』

「クロウ!」
凄まじい勢いで扉が開いた。俺、鍵かけといた筈なんだが。蝶番吹っ飛んでんぞ。そうきたか。
おはようさん。寝台の上で胡座をかいたまま手を上げる。リィンは大股で俺の前まで歩み寄ると前髪を上げて額を見せた。
「名前を書くな!」
あらら。油性はちとまずかったか。


1/18 『亭主関白』

「戻って来て貰う」と後輩だった少年に去り際に言われた。十月の終わりのことだ。
次に顔を合わせたのは一月半経ってからのことだ。その時には「取り戻す」と言われた。
いつから俺はお前の物になった、と頭に浮かんだが言わなかった。ただ、彼と結婚する相手は大変だろうな、とは思った。


1/19 『どこか知らない場所へ』

「誰も知ってる奴の居ねぇ、どっか知らない場所に行きたいとか思ったことあるか?」
腰に腕を回す男に耳許で囁かれた。グリップを握る手が思わず緩む。帝都で交わした歌姫との会話の延長だったのかも知れない。
「ないけど……お前となら、いつか行ってみても良いかも知れないな」


1/19 『仕事柄、昔和尚にこんなことを言われたことが~(中略)~甘く匂うものは何かが「いる」らしいとのことです』のRTからインスピレーション

穏やかな顔をしている。生前の彼は表情の豊かな男だった。だから、こうして顔の造りをまじまじと観察する機会は殆んどなかったように記憶している。
物言わぬ相貌を見つめながらリィンは深く息を吸った。鼻腔を甘やかな香りが突く。不意に、東方の謂れを思い出した。
「……いるのか、クロウ」


1/20 『生き方は似ているのです』

リィンは愛情に対して懐疑的だ。本来なら疑うべくもない無償のそれらを根本的に信じることの出来ない彼に、クロウは憐れみを覚える。
愛情も、信頼も、全てかつてクロウも持っていたものだ。そして、同様のものが今のリィンの周りにも溢れていることを知っていたからだ。
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