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04.29.06:11

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  • 04/29/06:11

12.10.07:05

「ESCHATOLOGY」キャラでもやってみよう(笑)。

でも人気のあるキャラだけ(笑)。


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もうちょい詳しく。

08.02.06:13

ちょっとホモっぽい話(…)。

ってか、ヒルテレに関して(ヒルセレじゃないYO)。


え、この話続くの!?

07.12.13:03

小ネタ

「ふと、思うことがある」
 なるべくゆっくり、東西南北は言った。窓の外を見ていた男は、自分に向けられた声に反応して肩越しに少し、小首を傾げるが視線が交わることはなかった。端からこの気紛れな男と向かい合って話すことなど期待はしていなかったので、構わず東西南北は言葉を続けた。
「何故、メシアーハではいけない?」
 問うが、男は答えない。開け放たれた窓から吹き込む風が緩く男の色味のない髪を掻き混ぜて行く。沈黙に、答えたくないのだろうか、と見当を付ける。それとも、答えに迷っているのかも知れない。
 問いは素朴な疑問で、特に答えを期待したものではなかった。だから、男が投げ掛けた言葉に沈黙を返しても、東西南北は落胆することも、怒りを覚えることもなかった。呑気に会話をしている場合でもなかったかな、とあまり気の進まない書類の山に目を遣りながら、万年筆を握り続けたせいで痛む中指のペン胼胝を揉み解す。ああ、紅茶が飲みたい、などと考えながら欠伸を噛み殺すと、そこで明々後日の方向を向いている筈の男と目が合った。
 男は器用に肩眉だけを下げて、ただでさえ目つきの悪いそれを更に細めて東西南北を見下ろしていた。表情は、ないに等しい。珍しいことだ。
「ヒロくん……」名前を呼ばれる。掴み所のない、掠れた低音だ。「何言ってんの?」
 そこまで言い終えると、途端に口の端が持ち上がり弧を描く。馬鹿にされているらしい。
「白に近い金の髪、瞳は冬の湖の色――お前好みだろう、あの男は」
「うっわー、第一位将軍サマとは思えないくらいのテイゾクなはつげーん」
「ただの符号の一致なら、私も追及はしない。だが、アレはお前が見つけ、そして育てたのだろう」
 そこまで促してやると、男は漸く得心がいった、という様子でワザとらしく頷いて見せた。
「って、それにしたって何だその今更な質問は……お前らしくもない」
「仕方がないだろう、気になったのだから。気になってこれじゃあ仕事に身が入らない」
「いや、別にそんで困るのはお前だから俺はどーでもいーデス」
 切って捨てられた。
「んん、でもまぁ……分かるだろう」
 少しだけ、気配が変わった。薄い唇は変わらず弧を描いているし、目許は楽しげに細められてはいたが、そこに、ほんの僅かばかりの嘲りが混ざる。対象を、ここには居ない者へと移した、酷薄な笑みだった。可哀相に、彼にしてみれば自分もそう大差ない括りであることは理解していたが、それでも東西南北は嘲笑を向けられた相手に同情した。同族相憐れむ、と言った方が正しいのかも知れない。
「インクの出ない万年筆に価値はないし、実を付けない葡萄の木はあっても邪魔なだけだ」
 直接的な表現は避けて、彼は言葉を選びながらゆっくりと言った。
「それと同じだよ。駒に情は移らない」
 まぁ、そんなとこだろう、という同意を込めて東西南北は控え目な溜息を吐いた。そんな東西南北が面白かったのか、男は一層笑みを濃くすると踵を返して再び窓の方に向った。その背中をぼんやりと目で追う。風に揺れるカーテンを脇に除けながら、男は窓を閉める。まだ執務室に居座って空を眺めるものだと思っていたので、そんな男の行動を少し意外に思いながら、それならいよいよ自分も後倒しの仕事に取り掛からなくてはな、と机に向う。

 その前を、足音もなくゆるりと男が通り過ぎた。
 性質の悪い麻薬か何かのようだ、と思う。
 顔を上げ、扉の方を見る。
 白い厚手の綾織りに、褪せた青い銀髪が落ち掛かっている。
 この角度からだと、顎から首にかけてのラインが僅かばかり見える。
 肩から肘に向って、綾織の下に筋張った肉と骨の塊が。
 そして袖口から、死人のような土気色のしなやかな腕が伸びている。
 男は東西南北の視線に気付いていて、ドアノブに手を掛けたまま動かない。
 
「灰罹」

 呼んでから、どうしようかな、と考える。
 ああ、殺されるかも、とも思う。
 このまま聞こえなかったことにして出て行ってはくれないか、と脳裏に過ぎる。

 それなのに。
 こういう時にばかり、あの男は嫌に素直に振り返る。
 まるで綺麗な顔をして、まるで無垢な子供のように、醜いもの、汚いもの全てを遠く置き去りに、柔らかな笑みをつくる。

「なに?」

 こんな醜悪な生き物を、東西南北は他に知らない。

「いや」

 まるで何でもない顔をして、呼ばれて、笑っている。そんな彼に、微笑み返す。何でもないことのように、笑顔を向ける。

「愛しているよ」

 吐き気がする。

 彼は、穏やかに微笑んでいる。優しげな眼差しを東西南北に向けている。東西南北の言葉に、そう、と小さく呟いて、頷いて、微笑んでいる。

「ゲテモノ趣味だな」

 微笑んでいる。