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  • 04/29/04:23

07.11.03:07

Ein Narr(完結編)

書きかけだけど、多分もう続きを書くこともないだろーってことで載せちゃう(…)。
二年か三年くらい前に書いた話?短文??
あ、でもかーなーりー……ネタバレ、かも。




愚か者 Ein Narr
banana

 灰は白く、降り積もる様は雪に似ている。実際に雪を見たことはなかったが、そんなものだろう。冷たくはないし、長く触れても凍傷にこそならないが、吸い込めば器官が痛むし、服に纏わりついたり靴の中に入ったりと、灰は灰で色々と厄介だった。その上、灰は病の媒介でもあった。この厄介者が生まれる経緯は、とても不幸な要因が幾つか積み重なってしまった、ただそれだけなのだということを知る者は少ない。
 その不幸な要因の一番当たり障りのない箇所を担当する当事者の一人は、開け放った窓から風と共に灰が入り込むのも構わず、仄白い地平線を眺めていた。その当事者の関わった要因は、事態の先延ばしだった。それを意図したわけでない。ただ、歪みを支えきれず外に溢れ出した、それだけだ。結果、人々は死と狂気と、それらに連なる恐怖にただただ日々を脅えて過ごしている。意図したわけでなかった、本当に。苦しめば良いなどとは、少しも思っていなかった。ただ、思いの他許容量が狭かった――仕方ない。それように造られた器ではなかった――のと、思いの他世界はほとほと狂っていた、それだけだった。
 本当は、これで少しは良くなるのだと思っていた。だが、それは浅はかだった。世界を救うどころか、歪みは溢れ出しこの身をも蝕んでいる。常に苦痛に晒された肉体に常人の感覚などある筈もない。なのに理性のようなものは依然として失われずそこにあり続ける――実に馬鹿馬鹿しい。けれど、それは良かった。罪悪感ですら自信への慰めにしかならない事を知って尚、己の行いを決して正当化しない為の拠り所とした。
 幸せでもないのに、不幸な彼はいつも笑っていて、それがいつも辛かった。幸せに、幸福に、そうであるように、そうであるべきなように、彼はいつも絶えず努力していた。
 彼は幸せに、と言った。その意味もよく判らず、ただ大切なものをこれ以上奪わせまいと願う。その祈りが、他の多くを傷つけようとその責は総て自身が負う。ただ、その幸福の意味だけがどうか傷付かなければ、とそればかりを思う。結局、今更自分が幸福に成り得ることなど、ありはしないのだから。

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